旅に出ると決めた。
でもどこへ?
感覚が高鳴る土地を探る。
そこはきっと今、自分が行くべき導かれている場所だから。
家族で9泊11日の旅をした。
パリ、アイスランド、そしてミラノへ。

今回の旅のテーマはまさに「導かれるままに」。
無理に選ばない。
感覚が高鳴る場所だけを選ぶ。
初めはここだと思っても、うまく繋がらなくて今は違うのかも、と思った土地もあった。
けれど力を抜くたびに、なぜかまた同じ場所へ心が戻っていく。
何がやってくるのか。
抗わず、ひたすら流れに身を委ねる。
そして目の前で起きるすべてを、貪欲に感じていく。
パリはアイスランドへの接続地点だった。
ちょうど一年前にも家族で暮らすように過ごした街。
またここを経由することになったのは、きっと偶然ではない。
私の深いところは、この旅を通して何を見せようとしているのだろう。
思考だけで旅程を組んでいたら短期スパンで同じ国は選ばないはずなのに。
そんなことを思いながら、魂の意図を探る。

とは言え、目の前の景色を、恋焦がれて止まないこの土地を、記憶をなぞるように堪能した。
やっぱりパリは美しい。
世界でも唯一無二の孤高さに、改めて恍惚とする。

私なりに解釈した、パリへ再び導かれた理由。
それは、この街を特別な場所ではなく、日常の延長として感じるため。
いつか当たり前のように行き来する未来を、先に心へ馴染ませるためだったのかもしれない。
往路の飛行機はエールフランスを使った。
東京とパリを日常のように往復する、日本人クルー。
その存在がなぜだか私を終始惹きつけて、輝いて消えなかったのは、きっと未来の往復している自分を重ねたから。
私はパリに通うライフスタイルを、夢見たのだ。

それを具現化する方法はまだわからないのだけど、それでも確かに描けた未来を胸に、次の国へと飛び立った。
アイスランド、そこは未知の土地だった。
ユーラシア大陸と北米大陸の境界線が、海の底ではなく陸上に剥き出しで現れている。
日本もまた異なるプレートの境目に生きる国だけれど、ここでは地球の活動が隠されることなく、そのまま目の前に風景として広がっている。

黒く冷え固まった溶岩の大地、どこまでも広がる苔の緑、轟く滝、まるで地球が呼吸するように何度も空へ噴き上がる間欠泉、そして、果てしなく続く氷の世界。
目の前にあるすべてが、人間ではなく地球が主役だと語りかけてくる。
そこは、火山と氷河が今なお大地をつくり続ける場所。
壮大で、原始的で、地球が生きていることを、否応なく感じさせる圧倒的な世界だった。

ここでは人間は主体ではない。
自然を征服するでも、支配するでもない。
ただその営みの前で、自分という存在が静かに小さくなっていく。
まさに私が、ずっと深いところで求めていた在り方そのもの。
「ああ、だからここへ導かれたんだ」
そう言葉になるよりも先に、身体の奥で腑に落ちていた。

私はここで溶けた。
枠が溶け、自分という存在と意識を源泉に、ただ存在しているのだと。
大地と共鳴する体感覚の中で、もうただただそうなんだよと腑に落ちた。
WEL’Lという枠を超えて、私は岡本佳苗として、もっと言うとその名前の枠さえも溶かして、溢れるものを止めどなく表現していい。
広大な大地でそんな風に、自分自身へのメッセージのような体感覚もあった。
もっと柔らかくもっと壮大に。
内側から湧く熱をなんの制限もなしに許していい。
溢れるものをそのまま流し続けて生きていい。

ここではたくさん瞑想もした。
大地や風、空気、動物さえも、その土地に満ちるあらゆるエナジーに、自分を同期させてもらえたような、とても尊い体験の連続だった。
あの土地は、私をどこかへ連れていくのではなく、本来の私へと還してくれる場所だったのだと思う。

そんな風に自分という枠が溶けた感覚を抱えたまま、私たちは最後の目的地、ミラノへ。
ミラノでは街の中心地のアパルトマンに滞在した。
街へ着くやいなや、偶然私の前をモデルのような美しい女性が颯爽と通り過ぎた瞬間があった。
釘付けになって彼女を追った。
そして彼女は、滞在するアパルトマンへとすーっと吸い込まれていった。

きっとここで暮らしているのだ。
彼女のライフスタイルを想像すると、たちまち胸が高鳴ったことを今でもはっきり覚えている。
美意識を根底に生きる一つひとつの選択をすること、それが私にはキラキラと輝いて、その素敵な要素にまたしても共鳴したのだった。
「美しく生きたい」
大自然からの振り幅はとんでもないのだけど、枠が溶けた中でそれもまた確かに私の内から湧いてきた望みだ。
感じるままに自分の欲しいものをどこまでも溢れさせたい。
そしてその感覚の中に浸って生きていたい。

この土地でもまた、私は確信したことがある。
私はWEL’Lをまだまだ創り続けたい。
自分の美意識を、高揚感を、そのまま形にしたような、私だけの美しい世界を具現化し続けること。
私の一部であり、核にある大切な表現をもっともっと丁寧に磨いていきたいと、自分の既に持っているものに改めて愛着を感じた。
大自然から一転して、人間の意志であり尊厳とも言えるような美意識もまた、私の大切にしたいものだ。
あらゆる感性が展開していくこの旅に、その振り幅に笑っちゃうのだけど、これこそが旅をすることそのものだと思う。
自分を面白いほど多角的に刺激してくれた今回の旅は、私の人生にとって忘れることのないものとなった。
私はこの旅に、導かれていたのだ。

あとがき
この作品は、旅の記憶を時間をかけて編み直したものです。
一方で、旅の道中でリアルタイムに書いた記録はnoteにそのまま残しています。
Kanae Okamoto
岡本佳苗
